登壇者(50音順)
門眞一郎さん (児童精神科医・京都市児童福祉センター)
酒木 保さん (臨床心理士・宇部フロンティア大学)
高木俊介さん (精神科医・たかぎクリニック・ACT-K)
中川 聡さん (全国オルタナティブ協議会代表理事)
司会 金田恆孝(東淀川教会主任牧師・臨床心理士)
※ご登壇のみなさんの予稿は、以下に掲載しています。
門 眞一郎 (児童精神科医・京都市児童福祉センター)
発達障害における薬物療法の位置
発達障害に対する薬物療法の位置は、「障害」を医学モデルで考えるか社会モデルで考えるかで大いに違ってくる。
発達障害は、「生まれつき脳の一部の機能に障害がある」という表現がよくされる(e.g.厚労省ホームページ)が、それは医学モデルによる考え方である。
社会モデルで考えれば、いわゆる発達障害とは、生まれつき多数派とは異なる脳機能のタイプ(脳の情報処理の仕方)が、環境(社会)との関係の中で生じる事態であり、社会的障壁のために、日常生活又は社会生活に制限を受けている状態と考えられる。つまり、社会の側の対応次第で「障害」になったり、「個性(特性)」にどどまったりする。そのことを説明するために、自閉(症)スペクトラムのダイナミック氷山モデルを提案する。
さらに、社会モデルの考え方をもっと進めて、診断と発見について考えてみる。病気や障害の診断(diagnosis) では、ネガティブ(否定的)な特性に注目するが、才能の発見 (discovery) では、ポジティブ(肯定的)な特性に注目する。当日は、Attwood と Gray による、Aspie の発見基準を援用して考察してみたい。
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酒 木 保 (臨床心理士・宇部フロンティア大学/大学院教授)
発達障がいと言われているお子さんとかかわらせていただいて、30数年になります。
この間一貫した対応の方法は見出せませんでした。これはごく当たり前のことです。
かつて一貫したアプローチとして、行動療法がありました。正しい行動理論を理解せず治療と称して虐待してきたグループがいます。これに代わって最近ではやたらと薬物を用いて、子どもの行動をコントロールしようとする風潮も見られます。
人は人とのかかわりをもって人として育ってくるとの考えから、子どもと接してきました。その中で良くなるとはどういうことなのかということが頭を離れません。
公認心理師という国のお墨付きがもらえることが決まったようです。水戸家の印籠にもなりかねないお墨付きを持って、子どもとかかわる者の責任は大きなものとなるでしょう。お墨付きはそれなりの保障となるが、それには多大なる責任が伴うことを皆様と一緒に考えたいと思います。
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中 川 聡 (全国オルタナティブ協議会代表理事・サルサダンサー)
医療化と実質強制治療の弊害
医師法第二十二条 は「医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。」とある。実際に治療受けたり、服薬するか否かの選択の権利は患者本人にある。
薬を飲むのも本人、効果を感じるのも本人、副作用を感じるのも本人。そして、薬が役に立っているかどうかも薬を飲んでいる本人にしかわからない。しかし、現在の日本の医療や福祉の現場では、本人の意思よりも、医師の処方を絶対視し、実質的に服薬を強要するという悪しき慣習が見受けられる。本発表では、特に21世紀に入って急激に進む医療化の弊害を解き明かし、その背景となる社会状況を解き明かす。